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古来より山桜の里として親しまれてきました当地の桜。
平安時代の歌人 紀貫之が桜川について詠んだ歌が「古今和歌集」から40余年後に編まれた「後撰和歌集」に収録されています。
「常よりも 春辺になれば桜川 波の花こそ 間なく寄すらめ」。
現代語に訳すと「春になると桜の花びらが川面をおおって流れていく。少しの間も空くことなく、壮観な眺めだ。」といった意味になります。
なんとも幻想的で、桜の儚い美しさに彩られた桃源郷のようなイメージを抱かれる名歌です。遥か千年の昔、桜の名所としての「桜川」の評判が、遠く平安京にまで知れ渡っていたという事実に驚かされます。
そして、その名をさらに全国に広めたのは室町時代の世阿弥作「謡曲 桜川」です。
江戸時代には歴代将軍により、隅田川堤はじめ、現在の皇居や上野山、新宿御苑、小金井等の江戸各所に多くの苗木が移植されました。その数は推計でおよそ2万本にものぼるそうです。江戸の花見の名所づくりには、桜川の桜は欠かすことができない存在であったことがわかります。
特に水戸黄門として有名な徳川光圀は、櫻川磯部稲村神社を度々社参、この地のサクラを大変気に入り、偕楽園前を流れる見川川(みかわがわ)のほとりに桜川の桜を移植し、その川を「桜川」と名付けてしまうほどでした。
明治に入ると、当市出身の俳人石倉翠葉(いしくらすいよう)や、日本植物学の創始者三好學(みよしまなぶ)博士による研究・出版活動により、再び脚光を浴びることになった桜川は、大正13年に国の名勝指定を受けるにいたりました。昭和49年には国の「天然記念物」に指定されています。
そして現在。画一的なソメイヨシノとは違い、一本ごとに色、形、匂い、開花時期までが異なる多彩な山桜が群生する桜川の景観は、その価値が広く見直されてきています。
桜の名所といわれる櫻川磯部稲村神社、磯部桜川公園、高峯の山桜、雨引観音を中心に、桜の咲いている時期に「桜川の桜まつり」が開催されます。詳細はこちら からご確認ください。
桜川の桜まつりの期間は櫻川磯部稲村神社で「無料桜ガイド」を行っています。桜めぐりをするなら櫻川磯部稲村神社からスタートするのがオススメです。
謡曲「桜川」は桜の名勝地として名高い磯部一帯が舞台です。
室町時代の1438年に櫻川磯部稲村神社の神主磯部祐行が、当時の関東菅領(実際は鎌倉公方)であった足利持氏に、花見噺「櫻児物語」一巻を献上しました。
その物語を目にした第六代将軍足利義教が、世阿弥元清に作らせたのが謡曲「桜川」です。
常陸と下総の国司になった平将門の子、桜子の若の物語で、母子の愛情物語として描かれています。
~あらすじ~
九州の日向国(宮崎県)桜の馬場の西に、母ひとり子ひとりの貧しい家がありました。
その家の子・桜子は、東国の人商人にわが身を売り、お金と手紙を母に渡してくれとたのみ国を立ちます。
その手紙を読んだ母は、嘆き悲しみ、子の行方を捜す旅に出ます。
それから3年、遠く常陸国(茨城県)で桜子は磯部寺に弟子入りしていました。
春も盛りの桜の季節、桜子は住職と共に花見に出かけます。
丁度その頃、桜川のほとりには、長い旅路の末、狂女となった桜子の母親がたどり着いていました。
桜川に散る花びらをすくって、狂った有様を見せる女がいることを聞いた住職が女を呼び出して訳を聞くと、九州からはるばる我が子を探しに来たことを語りました。
桜を信仰するいわれ、我が子の名が桜子であることなどを語り、想いを募らせて狂乱の極みとなっていたのです。
住職は、連れている桜子を引き合わせます。
二人は嬉し涙にくれ、母は正気に戻り、連れ立って国に帰ります。
後に母も出家して、仏の恵みを得たことから、親子の道は本当に有難いという教訓が語られます。
✿謡曲「桜川」は毎年、桜の時期に不定期で櫻川磯部稲村神社で公演します。開催日などは櫻川磯部稲村神社(☎0296-75-2838)にご確認ください。
所在地 | 茨城県桜川市磯部740-2(磯部桜川公園) |
アクセス |
〇JR水戸線羽黒駅より徒歩40分(2.3km) |
駐車場 | 有(60台) |
トイレ | 男性用(和式1、小便器2)、女性用(和式2)、障がい者用(洋式1) |
お願い | 桜の木の周りにロープが張ってある場合、ロープの中に入らないようお願いいたします。桜の木の根や新芽を保護しています。ご協力をお願いします。 |
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